最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)269号 判決 1952年12月26日
本籍
北海道十勝国帯広市東一条南一二丁目一七番地
住居
長崎市戸町一丁目五四番地 清水寮内
刃物並びに売薬行商
勝又庄松
大正一一年八月二〇日生
右の者に対する恐喝被告事件について、昭和二五年一〇月二五日福岡高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
原判決を破棄する。
本件を福岡高等裁判所に差戻す。
理由
被告人本人及び弁護人吉中龍治の上告趣意は、末尾添附別紙記載のとおりである。
弁護人吉中龍治の上告趣意第一点について
記録によると、原審第一回公判調書には、所論の如く、昭和二五年一〇月一一日の第一回公判期日に裁判長判事後藤師郎、判事竹下利右衛門、判事青木亮忠の三名列席の上公判を開き審理の後、同日弁論を終結した旨の記載があるに拘わらず、同月二五日の第二回公判期日に、裁判長判事後藤師郎、判事筒井義彦、判事青木亮忠の構成により宣告された原判決の裁判書には、単に右後藤裁判長及び青木判事の両名のみが署名押印しており、右審判に関与したものと思われる竹下判事の署名押印はなく、またその署名押印なきことについての裁判長の事由附記もない。右は明かに刑訴規則五五条に違反したものであり、しかもかかる法令違反は、判決に影響を及ぼすべきものであることは勿論であり刑訴四一一条を適用するを相当とするから爾余の同弁護人及び被告人本人の上告論旨に対する判断をなすまでもなく、原判決を破棄することとし、刑訴四一三条に則り主文のとおり判決する。
右は裁判官全員一致の意見である。
検察官 岡本梅次郎関与
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)